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各国移転価格NEWS~カナダ~

 2018年1月、OECDは、今後各国が国別報告書をますます効果的に利用できることを目的として、国別報告書に係る規則を設けている95カ国に対して初めてのピアレビューを行いました。同評価によって、当該各国の国別報告書が適正に利用され、国家間の情報交換が効果的に機能しているか、また、守秘義務が適正に行使されているかについて評価が行われました。近年OECDの基準に基づき、国別報告書の法整備を進めてきたカナダでは、概ね高評価を得たものの、国別報告書の提出について一点勧告を受けました。その内容は、カナダの国別報告書の提出に関する規則が、本来より広範囲過ぎるというものでした。
 現在のカナダの規則の下では、カナダと親会社の居住地の課税管轄国(地)との間に国際協定が結ばれていない場合でも、カナダでの国別報告書の提出が要求される可能性があります。これは、OECDの基準では承認されていないものです。カナダ財務省は、すでに自動情報交換のための二国間協定を多くの国と結んでおり、そのような例はほとんど発生しないであろうと説明を行っていますが、OECDは規則の修正を求めています。
 積極的に移転価格文書に係る法整備をすすめているカナダですが、国別報告書に係る規則はどのように整備されてきたのでしょうか。
 カナダの移転価格税制はOECDガイドラインに準拠し、所得税法第247条に移転価格に関する文書化の義務・罰則等が規定されています。その後、OECDのBEPS行動13の制定により、カナダ財務省は2016年7月29日に国別報告書に関する規則を公表しました。法案は、OECDにより推奨されたガイダンスに沿って定められ、報告書提出の対象者は、年度の連結売上高が7.5億ユーロを超えている多国籍企業で、カナダで活躍している子会社にも適用されるとしています。多国籍企業の最終親会社が、報告会計年度にカナダに居住地をおいていたのであれば、一般に、最終親会社が国別報告書を提出することが求められています。対象会計年度は2016年からであり、会計年度終了日から12か月以内に文書の提出が求められています。言語は英語からフランス語です。法案では、報告書を提出しなかった際のペナルティについても言及しています。
 同法案は、もともと2016年度連邦予算で公表されていましたが、今回さらに、誰が報告書を提出しなくてはならないのかが明確に定義づけられたています。すなわち、

  1. 最終親会社がカナダに居住地を置く場合、最終親会社が提出
  2. 最終親会社が自己の法人税申告の課税管轄国(地)において国別報告書を提出する義務がない場合は、カナダに居住する子会社が提出(複数の子会社がある場合は、どれか1社)
  3. 最終親会社の課税管轄国(地)がカナダと国別報告書を自動的に交換する協定を結んでいない(課税管轄国(地)間の適格な権限のある当局間合意(Qualifying. Competent Authority Agreement:QCAA」)場合は、カナダ居住の子会社が提出
  4. カナダ財務省が構成事業体に、QCAAに基づく親会社の居住地の課税管轄地(国)と情報交換が良好に実施できないと通達した場合にも、カナダの子会社による国別報告書の提出が求められることになります。

 こうして国別報告書の規定が公表され法の整備が進み、カナダ歳入庁は、2017年2月、国別報告書を提出する際の様式Form RC4649、記載事項や注意すべきき詳細が記されたGuidance on Country-by-Country Report in Canada 2017を公表しました。また、国別報告書の自動的情報交換を目的とする他国との二国間協定も進められ、2017年6月に新たにアメリカと協定を結んだ時点で、カナダはすでに50以上の国々と二国間協定を結んでいました。国別報告書の情報交換により、税源浸食や利益移転のリスクが高いレベルか否かを検討することが可能となり、また、経済的かつ統計的分析のために利用可能となりました。さらに、国別報告書のデータは、税務調査において多国籍企業グループの問題をさらに検討する上で使用されるかもしれません。
 このようにカナダでは、国別報告書の法整備と効果的な利用がはかられています。OECDは、移転価格文書についてBEPSの行動13に基づきマスターファイル、ローカルファイルと国別報告書からなる3層のアプローチを適用していますが、カナダは、現在のところマスターファイルと、ローカルファイルの利用についての明確な指針は示されていません。しかしながら、国際社会における潮流のなかカナダでも、今後、両ファイルの適用についても議論がなされていくでしょう。

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