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最新の「OECD移転価格ガイドライン」が国税庁ホームページにアップされました。

 2018年7月、国税庁ホームページに「OECD移転価格ガイドライン(2017年7月)」(以下、「ガイドライン」といいます。)がアップされました。これは、2017年7月、OECD理事会において改訂承認されものであり、これまで英語と仏語の限られた言語でしか読むことができなかったものが、約1年の月日を経てようやく日本語で読むことができるようになったわけです。
そこで本稿では、その意義や、新ガイドラインの注目すべき諸点の若干の解説をシリーズで行います。

わが国における移転価格ガイドラインの位置づけ

わが国の移転価格事務運営指針において、調査等の基本方針を記した項目には、次のとおり記されています。

(基本方針) 1-2

⑴ 省略

⑵ 省略

⑶ 移転価格税制に基づく課税により生じた国際的な二重課税の解決には、移転価格に関する各国税務当局による共通の認識が重要であることから、調査又は事前確認審査に当たっては、必要に応じOECD移転価格ガイドラインを参考にし、適切な執行に努める。

移転価格事務運営指針は、国税庁長官が国税職員に対し上意下達するものであり、国税職員は、調査や事前確認審査において、ガイドラインを参考にするよう明記されていますから、その意味あいは大変重要であると言えます。
国税の賦課・徴収は、憲法から法律により行われるものであり(租税法律主義)、法律でないガイドラインを参考にしながら、税務執行を行えと明記している意味は、極めて重大であると言えるでしょう。

申告納税制度とガイドラインの関係

今日の多くの租税は、自己申告納税制度により行われています。この考え方は、1949年のシャープ勧告により導入された、いわば税務行政における根幹の制度です。この制度が、自らの納税額を自ら計算して納付するという制度であることは、いまさら説明を要すことではないでしょう。ただ、この制度を実現足らしめるには、納税者に、国は、具体的には国税当局は、課される法を明確に示し、その計算を明示し、その方法等に透明性などを確保しなければなりません。
こうしたことを前提にガイドラインを捉えてみると、「法」ではないものの、国税庁長官は国税の全職員に対して、ガイドラインを参考に適切な執行をするように命じているのですから、そう命じている以上は、執行官庁たる国税庁は、納税者が容易にガイドラインを読み得るよう、あたりまえですが日本語で、法人税法やその他の通達同様に、国税庁ホームページなどに搭載しておく必要があると言えるでしょう。
 今回、やっとガイドラインの日本語訳が搭載されたことは、自己申告納税制という極めて重要な、税務行政の根幹にかかわる視点からも、実は大変意義深いものと考えられます。

新ガイドラインの重要性

 新ガイドライン以前の旧ガイドラインの全文、すなわち第1章から第9章までは、2010年版として私たちは読むことができました。ただし、2010版ガイドライン以降は、ロケーションセービングなどの若干が改訂されていましたが、そうした内容が反映された全文は出版されませんでした。また、国税庁ホームページには、第1章から第3章と第9章の翻訳版は搭載されていましたが、第1章から第9章までの全文を、国税庁ホームページで読むことはできなかったのです。このことは上で述べた自主申告納税制度を履行する上で、十分な情報提供がなされている環境ではなかったと言えます。
 なぜなら、事務運営指針でガイドラインを重視しながらも、誰もが容易にその中身を読むことすらできないのでは、国税職員ばかりか納税者も、税務執行上、やはり問題があると言えるからです。
加えてこのことは、近時の移転価格税制に関する税制改正の中身を見た場合に、重要な問題を含んでいたと言えるでしょう。
 その1つの例が、2016度税制改正の移転価格文書化の法整備です。これは、OECDのBEPSプロジェクトによる成果物、すなわち2015年10月の最終報告を受け、わが国も最終報告書にあわせるかたちで国内法の整備がはかられ導入された制度です。この多くは、新ガイドラインの中身として第5章の移転価格文書化として今回反映され、巻末には、第5章の別添資料も掲載されています。
 ただ、日本の法人で圧倒的に多い3月決算の法人にあっては、7月に今回の新ガイドラインがアップされた段階では、国別報告事項(CbCR)やマスターファイル(MF)を当局にすでに提出を終えていたのです。CbCRやMFを初めて作成するにあたり、ぜひとも参考にしたい当の新ガイドラインや参考資料は、この日本で日本語で読むことすらできない状況であったのです。このことは、あまりにも移転価格文書化の環境整備としては、不十分であったと言えるでしょう。せめて提出までには、新ガイドラインにあるこうした一連の資料を、少なくとも納税者が読める状態にしておくことが、繰り返しになりますが自主申告納税制度にあっては然るべき国税当局の対応であったわけです。

新ガイドラインの中身

さて、新ガイドラインは、そのページ数だけでも、463ページあります。それまでの2010年版が全282ぺージであることを見れば、ページ数は実に181ページも増加しています。率にして64%増です。
いったいこれだけの中身の増加は、何に由来しているのでしょうか。また、これほどのページを有する新ガイドラインを、どのように読み進めていったらよいのでしょうか。
これらの点については、次回以降でご説明したいと思います。
(続く)

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