移転価格辞典
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利益法の選択と独自の機能

利益分割法とTNMMは、なぜ基本三法と分けて利益法として括られるのでしょうか。この2つの方法は、基本三法である独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法ほど厳密な比較可能性が要求されないという点で、敷居が低い方法といえるでしょう。また、ベストメソッド方式に移行する前から、利益分割法とTNMMの間には優先順位はありません。では、基本三法が実質的に適用できない場合、利益分割法とTNMM、どちらの方法をベストメソッドと判断すべきでしょうか。

利益分割法とTNMMの適用が分かれる点は一つで、端的にいえば各関連者の双方が無形資産を持っているのであれば利益分割法、そうでなければTNMMを適用すべきと整理されます。ここでいう無形資産というのは、特許、商標などの使用権や技術ノウハウ、販売先との信頼関係など、その企業に固有のもので重要な価値がある無形の財産です。これはOECD移転価格ガイドライン第6章でも述べられていますし、実務においてもどのようなものが無形資産になりうるかという点で経験が積み上げられています。利益分割法を適用するにあたっては、グループが有する無形資産を特定し、国外関連取引の双方にその無形資産が帰属することを確認します。

しかし、2011年度税制改正において「独自の機能」を有するという文言に変更されました。この「独自の機能」とは何であるかという定義は、現在のところ示されていません。法案段階で行われる公開質問において、「無形資産よりは広い概念である」という考えが示されたのみです。

この改正により納税者の見解として国外関連者には無形資産の帰属がないとしたとしても、税務当局がこの関連者に「独自の機能」といえるようなものが存在すると認定した時点で、TNMMではなく利益分割法を用いることになります。ベストメソッド方式で移転価格算定方法を決定する際の議論として、この「独自の機能」という明らかでない概念をテーマに税務当局との議論に発展する可能性を秘めているといえるでしょう。

では、税務当局がこのような「独自の機能」の存在を指摘し利益分割法を主張するとしたら、その動機は何でしょうか。それは、利益分割法の適用の柔軟性にあります。TNMMは、外部の比較対象企業の情報から適正な営業利益率を認定し、それを外国子会社の営業利益率が超える部分を課税します。比較対象企業の選定で見解の相違は当然ありますが、入手できたデータの組み合わせで議論を行うことになりますので、税務当局としても一定の制約の中での主張となります。これに対し、利益分割法はそれぞれの会社の分割ファクターが何であるかという議論に終始します。分割ファクターが何であるか、これも法令通達で明確にされているものではなく、個々の事案において認定していくことになります。税務当局としては、日本側に多くの所得が帰属するという主張も構築しやすくなります。

そういう意味では、納税者にとっても、自身の利益配分が適正だという主張を構築しやすいということになります。しかし、分割ファクターはいずれも日本親会社と外国子会社の数値を用いることから、客観的な説明になりにくくなります。移転価格調査において、納税者が構築した主張がどこまで調査官に響くかという点では、第三者のデータを利用して説明するTNMMに劣る部分は否めないでしょう。しかし、移転価格調査においては、どういう形であれ、日本親会社の価格設定に移転価格上の問題は生じていない、という主張をすることになります。可能であれば、TNMMによる説明を行い、それができない場合は利益分割法を活用を検討するというのが、実務的な判断になるでしょう。

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